自然とともに過ごす、日々のお庭【神戸市 E013、G011】
2026年4月22日
■暮らしのこれからを見据えた外構計画
建て替えに伴う外構のご相談から始まりました。長年住まわれたお家は、地震の影響もあり建てつけに不安が出てきたとのこと。これから先の暮らしを見据え、建物を解体し新しく建て替えるというご決断をされました。
お打ち合わせでは、具体的で明確なご要望をたくさんお聞かせいただきました。既存の板石や石垣、樹木を再利用したいということ。家の中からお庭の景色を楽しめるようにしたいこと。隣家への目隠しは樹木で行いたいこと。そして、ご家族皆さまが安心して歩き、楽しめる回遊できるお庭にしたいというご希望もありました。
さらに、食を大切にされているご家族らしく、菜園やコンポストへの取り組み、四季を感じられるお庭づくりなど、暮らしに直結したご要望がとても印象的でした。それぞれのご要望を丁寧に整理しながら、この神戸市の土地に合った最適なかたちを探っていくところから、今回の設計はスタートしました。


■森の中で暮らすような、静かな贅沢
設計の軸はとてもシンプルでした。「信州の雑木林のようなお庭」。ただし、それをそのまま再現するのではなく、この神戸市の土地、このご家族に合う形に整えることが大切です。玄関はレトロな雰囲気でまとめ、外構全体は時間とともに味わいが増す素材を選びました。既存の石や石垣も活かしながら、新しいものと自然につなげていく。見た目の華やかさではなく、長く住むほどにしっくりくる心地よさを目指しました。
ご主人は絵がお上手で、実際に玄関前のイメージパースを手描きで描いてくださいました。そのスケッチには、ご家族が思い描く暮らしの空気感がしっかりと表現されていて、設計を進めるうえで大切な道しるべとなりました。さらに、お好みの施工事例写真も共有いただき、イメージはとても具体的に伝わってきました。
そのひとつひとつの感覚を大切にしながら、ただ形にするのではなく、この場所、この暮らしに馴染むように整えていく。静かだけれど、確かな豊かさを感じられる外構を目指して、設計を深めていきました。


■日常に溶け込む、光と緑がつくる心地よさ
設計で大切にしたのは「見え方」と「感じ方」。日々の暮らしの中で無意識に心地よさを感じられるよう、視線や光、風の流れを丁寧に整えました。
玄関まわりは、ご主人のイメージをもとに設計を深めた象徴的な空間です。樹木でやわらかく視線を遮り、帰宅時に少しずつ景色が開けていく奥行きのあるアプローチに。さらに、高低差のある条件の中で門柱を斜めに配置することで、圧迫感を抑えながら広がりとゆとりを生み出しました。門扉や手すりはオリジナル製作とし、仕上げはRC打ち放しとすることで、素材そのものの表情が際立つ落ち着きある佇まいに整えています。細部まで積み重ねたこだわりが、この空間の静かな上質さを支えています。
隣家との境界は樹木でやさしく仕切り、光や風を通しながら“つながりつつ守る”空間に。さらに、西日や建物の照り返しにも配慮し、樹木によってやわらかく整えました。お庭には回遊できる小道を設け、木漏れ日の中を歩く時間が、自然と日常に溶け込む構成としています。


■設計が暮らしに変わっていく時間
完成後しばらくしてから、お客様よりお庭での過ごし方についてお話を伺う機会がありました。日々の中で少しずつお庭が馴染み、ご家族の暮らしの一部になっている様子を聞かせていただき、とても印象に残っています。
お庭は回遊できるつくりになっており、ご家族それぞれが思い思いのペースで外の空間を楽しまれているとのことでした。
奥様は生け花を習われていたご経験もあり、季節の枝ものや草花を暮らしの中に取り入れながら楽しまれていると伺いました。お庭の植物を身近に感じながら、室内と外のつながりをやさしく広げていく。そんな過ごし方がとても印象的でした。
また、菜園づくりも楽しまれており、収穫した野菜を使ったお料理で食卓がより豊かになっているとのこと。お庭で育てたものが、日々の暮らしへ自然につながっていく流れが、とても素敵だと感じました。
「朝、窓を開けてお庭を見る時間が楽しみなんです」
そんなお言葉もいただき、設計した空間がしっかりと暮らしに根づいていることを実感しました。


■完成してからが本当のスタート
完成して終わりではありません。むしろ、ここからが本当のスタートだと考えています。時間とともに樹木は成長し、景色は少しずつ変化していきます。その変化を楽しみながら、ご家族の暮らしに寄り添い続けること。それがこの設計の目指した姿です。
施工から年月が経った今も、ご連絡をいただきながらお付き合いが続いていることをとても嬉しく思っています。外構・造園・園芸を一体で考え、土地の力を引き出しながら、そのご家族にとって本当に心地よい空間をつくる。
これからも、このお庭がご家族だけでなく、訪れる方や周囲の方にとってもやさしく心に残る存在であり続けることを願っています。



