100年先まで美しい庭を目指して ― 芦屋の邸宅で紡いだ庭づくりの物語【芦屋市 L006】
2026年6月13日
芦屋市のお客様よりご依頼いただいた今回のお庭づくり。
工事が終わり、最後に庭全体を眺めた時、私たちは改めて思いました。
「庭は完成した瞬間がゴールではない」
10年後、30年後、そして100年後。
その時に見ても美しく、心が安らぐ景色をつくりたい。
そんな想いを込めて、一つひとつの作業と向き合いました。
芝生は“植える前”で未来が決まる

今回のお庭には広々とした芝生スペースがあります。
一見すると芝生を張るだけの簡単な作業に見えるかもしれません。
しかし私たちが最も大切にしたのは、その下にある土でした。
現地を確認すると、地盤は全体的に固く締まっている状態でした。
このまま芝生を張ることもできます。
ですが、それでは芝生の根が十分に伸びることができません。
雨が降っても水が浸透しにくくなり、夏場には弱りやすくなってしまいます。
そこでユンボを使い、20cm以上の深さまで丁寧に土をほぐしました。
見えなくなる部分だからこそ、時間をかけて整える。
そうすることで芝生の根は自由に広がり、しっかりと大地をつかみます。
数年後には青々とした芝生が一面に広がり、お子様が裸足で走り回れる庭になる。
私たちは、その未来の景色を想像しながら土と向き合いました。
石垣は“積む”のではなく“創る”

駐車場奥に設けた石垣には、少し錆色を帯びた丸みのある自然石を選びました。
力強さだけではなく、どこか優しさや温もりを感じる石です。
しかし石垣づくりは、ただ石を積み上げれば完成するものではありません。
一つひとつ形が違う天然石同士を美しく納めるために、ノミや玄能を使いながら細かな調整を繰り返します。
石を削り、叩き、また合わせる。
その地道な作業の積み重ねによって、まるで昔からそこにあったかのような自然な表情が生まれます。
私たちが目指したのは流行に左右されるデザインではありません。
100年経っても飽きることなく、その家の風景として寄り添い続ける石垣です。
年月を重ねるほど味わいが増していく。
そんな本物の庭の一部になればと思いながら、一石一石に心を込めました。
たった2mmに宿る職人のこだわり

アプローチやテラスの乱貼り石。
完成すると多くの方は石そのものに目を向けます。
もちろん石の配置や色合いも大切です。
しかし私たちが特にこだわったのは、石と石の間にある「目地」でした。
工事を急ぐのであれば、目地材を入れてスポンジでさっと拭き取れば完成です。
ですが今回は違います。
目地鏝を使いながら、全ての目地を石の表面より2〜3mm下げて仕上げました。
たった2〜3mm。
数字だけを見ると小さな差です。
しかし完成後に光が当たった時、その陰影が石の輪郭を際立たせ、奥行きのある表情を生み出します。
人は無意識のうちに、その美しさを感じ取ります。
なぜか高級感がある。
なぜか美しく見える。
その理由は、実はこうした細部にあります。
100年後にこの石畳を歩く人にも感動していただけるように。
そんな想いで最後の仕上げまで丁寧に向き合いました。
大自然を庭の中へ ― ロックガーデンへの挑戦

ロックガーデンを考える時、私たちの頭の中にはいつも大自然の景色があります。
そして今回は、建築家フランク・ロイド・ライトの思想も意識しながら石と向き合いました。
自然の中にある大きな岩には、不思議な迫力があります。
しかしそれは決して乱雑ではありません。
自然でありながら調和している。
今回目指したのも、そんな景色でした。
石の向き、高さ、重なり方。
特に難しいのは石のサイズ選びです。
石が揃い過ぎると人工的に見えます。
反対にバラバラ過ぎると落ち着きがなくなります。
絶妙なバランスを探しながら配置を決めていきました。
また植栽についても、高木をあえて少し斜めに植えたり、重ねて配置したりしています。
そのことで奥の木が見えやすくなり、庭全体に立体感が生まれます。
風が吹けば枝葉が揺れ、まるで木々が楽しそうに会話をしているようにも見えます。
ただし、やり過ぎると騒がしい庭になります。
自然とデザインの境界線を見極めながら、一つの風景としてまとめ上げました。
水の音がくれる、贅沢な時間

そして最後に設けたのが、川の流れをイメージした水景です。
真夏の日差しが強い日。
外にいるだけで汗ばむような暑さの中でも、水の流れる音を聞くと不思議と心が落ち着きます。
石に触れながら流れる水。
さらさらと響く音。
風に揺れる木々。
その全てが重なり合い、庭に静かな時間をつくり出します。
お客様がこの場所に立ち、水の音を聞きながらゆっくりと過ごされる姿を想像しました。
忙しい毎日の中で、ほんの少しでも心がほどける時間を過ごしていただきたい。
そんな願いを込めています。
